Co_2CrAl/MgO(100)界面でハーフメタル性がみられることを、第一原理計算により示した。酸化物とのハーフメタリック界面としては、これは初めての提案となる。Co_2CrAlについては相分離の可能性が指摘されており、バルクとしての不安定性が問題視されている。しかしこれを解決する手段として、Co_2CrAlと同じくハーフメタリックなCo_2MnSiを用いた、Co_2MnSi/Co_2CrAI/MgOヘテロ構造も考案した。ここでCo_2CrAlは数原子層という薄さに設定されており、それによりバルクとしての不安定性が回避され、しかも、界面での電子状態は依然としてハーフメタル性を保つ。同様にハーフメタル性を保つ類似したヘテロ構造として、Co_2MnSi/Co_2CrGa/MgO、Co_2MnSi/Co_2MnAl/MgOも提案している。 一方、結晶磁気異方性を利用したトンネル磁気抵抗素子の理論設計も実行した。これまでの研究から、FePt/MgO/FePt磁気トンネル接合(MTJ)が比較的高いTMR比を与えることが分かっているが、TMR比の更なる向上を目的とし、Fe層を挿入したFePt/Fe/MgO/Fe/FePt MTJを調べた。挿入されたFe層が3原子層程度とかなり薄い場合であっても、Fe電極を用いたときのような高いTMR比がみられることを第一原理伝導計算により確認している。またFePtの他に、磁気異方性をもつ電極材料としてCoPtも扱った。CoPtを選んだ元々の動機は、欠陥ができにくいなど作成面での利点が主であった。しかしながら、MgOを5原子層としたCoPt/MgO/CoPt MTJで400%程度のTMR比がみられるなど、FePtを電極とした場合よりも高いTMR比が期待できるとの予測を得ている。
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