研究課題
本研究は方法論の開発と、そのような方法論を用いて、現実的な物質群の電子状態の量子シミュレーションおよび量子デザインを実行することである。本年度は方法論の開発としては、1)フルポテンシャル・オーダーN法、2)オーダーN輸送現象第一原理計算手法、3)最適化有効ポテンシャル法の開発を行なった。またそれらの手法の応用としで4)ショットキー障壁の第一原理計算、5)ハーフメタリック反強磁性体のデザインとそれを用いたGMR素子の研究、6)YMn_2の電子状態と磁性、7)Sm_2Fe_<17>N_3永久磁石の電子状態と磁気異方性の研究を行った。これらのうち、1)6)と5)について簡単に説明する。1)、6)オーダーN遮蔽KKR法のフルポテンシャル化を行い、100層程度の薄膜のフルポテンシャル第一原理電子状態計算できる手法と計算機コードを開発した。この手法を用いて、16〜64層からなるAl/GaN金属半導体界面の第一原理計算を行い、n型GaNではショットキー障壁が形成されること、p型GaNでは障壁は小さくオーミック接触に近いことを示した。この結果は実験と良く対応している。5)ハーフメタリック反強磁性体は磁化を持たないにもかかわらずハーフメタルとなる新しいタイプのスピンヘトロニクス材料である。CrとFeまたはVとCoをペアとして含む、様々の化合物において、ハーフメタリック反強磁性体となる候補を計算機マテリアルデザイン手法により用いて探索し、それらのいくつかが化学的にも安定なハーフメタリック反強磁性体であることを見いだした。現在、実証実験を提案している。
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