研究概要 |
本年度の成果は以下のようである。 (1)希薄磁性半導体(DMS)の相分離とブロッキング現象のシミュレーション DMSは相分離を起こす系であることが昨年度までの研究で明らかになっているが、本年度は、相分離が起きた系の磁化特性をDimitrovらの提案した局所アルゴリズムによる非平衡状態のシミュレーション法(PRB54(1996)9237)を用いて調べた。その結果、系が相分離を起こし超常磁性状態となっていても、ブロッキング現象のために磁化曲線にヒステリシス現象が現れることがわかった。この現象はワイドギャップDMSで問題となっていた高温強磁性相の起源を定性的に説明する。 (2)DMSのスピノダル分解によるナノ磁性体の生成と制御 DMSの成長前にシーディング(種付け)を行うことで望みの位置にナノマグネットを自己組織化できることを示した。また成長中に磁性イオン濃度や成長速度を制御することでナノマグネットの形状を操作できることを示した。この方法によると半導体中にスピントロニクス素子を超高密度に自己組織化で生成することができる。 (3)酸化物を母体とする強磁性DMSのマテリアルデザイン デラフォサイト構造を持つ透明伝導体CuAlO_2のCuまたは、Alサイトに3d遷移金属を添加した系の第一原理計算を行い、遷移金属間に働く有効交換相互作用を第一原理から計算した。短距離相互作用のため、キュリー温度低くせいぜい100K程度である。 典型元素を添加したアルカリ土類金属の強磁性を調べ、炭素を添加したMgO, CaO, SrO, BaOで強磁性状態が安定となる。 ZnO系希薄磁件半導体におけるスピノダル分解の重要性を調べるた。3d遷移金属の混合エネルギーと有効原子対相互作用を計算し、ZnO系希薄磁性半導体がスピノダル分解により強い濃度不均一を起こすことをシミュレーションにより示した。
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