研究概要 |
本年度の成果は以下のようである。 (1)希薄磁性半導体への同時ドーピングを用いた磁性不純物の高の濃度添加法 希薄磁性半導体は一般に溶解度ギャップを持つ系で熱平衡状態では相分離をおこす。本年度は、同時ドーピング法により相分離を抑制し母体半導体に遷移金属を高濃度に添加する方法を提案した。計算にはKKR-CPA-LDA法を用い、混合エネルギーを第一原理から計算した。例えばGaMnNの場合、Mnのみの添加の時は混合エネルギーは正の大きな値となり相分離をおこすことがわかるが、Mnと同時にOを添加することで、混合エネルギーが大きく減少し、Mn濃度の低い領域では負の値となる。これは同時ドーピングがMnの高濃度添加に有効であることを示している。 (2)高いキュリー温度を持つ新しいハーフホイスラー合金の材料設計 半導体スピントロニクスデバイスのためのスピン偏極源として、ハーフホイスラー合金NiMnz(Z=Si,P,Ge,AS)の材料設計を、第一原理計算とモンテカルロシミュレーションにより行った。NiMnP, NiMnAs, NiMnGe, MiMnSiはハーフメタルであることが示され、Tc=715, 840, 875,1050Kが計算された。これらの物質が、半導体スピントロニクススピン偏極源材料として有望な材料系であることが示された。 (3)3d-4d遷移金属不純物の同時添加による希薄磁性半導体の材料設計 3d遷移金属のほかに4d遷移金属を同時添加した希薄磁性半導体の磁性を議論し材料設計を行った。4d遷移金属を半導体に有限濃度添加すると、母体半導体のギャップ中に磁気的に偏極していない不純物バンドが形成される。そこに磁気モーメントをもった3d遷移金属を同時添加すると、4d不純物バンドが磁気的に偏極し強磁性的な相互作用を3d遷移金属不純物間に誘起することを、GaFenやZnMnOにおいて確認した。
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