研究概要 |
安息香酸エステル類のビス(ピナコラート)ジボロンによるホウ素化反応が、[Ir(OMe)(COD)]_2とトリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィンを組み合わせた触媒を用いることにより80℃でオルト位選択的に進行することを見出した。本反応では配位子の選択がきわめて重要であり、dtbpyを用いた場合は上述したようにオルト位ホウ素化体は全く得られない。おそらくdtbpyの二つの窒素が強固に配位しているために基質のカルボニル酸素が配位できないためと考えられる。そこで、単座型配位子としてピリジン、トリフェニルホスフィン、およびトリフェニルアルシンを用いて検討を行ったところ、トリフェニルホスフィンで中程度のオルト選択性が認められた。続いてトリアリールホスフィンの電子的性質について検討したところ、電子供与性のものでは選択性が下がったが、電子求引性のものでは高い選択性が認められた。本反応では、ジボロンの二つのホウ素基のうち一つだけが利用可能であった。基質として、安息香酸エステルの2位、3位および4位にそれぞれ電子供与基あるいは電子求引基が置換しているものでも、対応する6位ホウ素化体が得られた。3位に置換基を有する基質では2位および6位で反応する可能性があるが、2位は置換基の立体障害のためにホウ素化は6位でのみ進行した。一般にブロモアレーン類は遷移金属に対して高い反応性を示すことが知られているが、芳香環上に臭素を有する基質でも反応はオルト位C-H結合で選択的に進行した。
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