研究概要 |
本研究では安価に入手容易なα-アミノ酸を官能基炭素資源かつ不斉源として利用し、高度に官能基化された非天然型アミノ酸および関連化合物を合成することを目的としている。これまでにK^+をカウンターカチオンとする塩基を高配位性溶媒中用いるとアミノ酸誘導体の環化が立体保持で進行することを明らかにしている。本年度はLi^+をカウンターカチオンとする塩基を低配位性溶媒中で用いることにより、立体反転で環化が進行することを見いだした。L-アミノ酸(Met, Ala, Phe)から得られる誘導体をLiTMP/THFで処理するといずれの場合も立体反転で環化が進行し、目的とする4置換炭素を持つ環状アミノ酸が81〜91% ee、66〜93%収率で得られた。同様にL-リジン誘導体をNaHMDS/DMFで処理すると4置換炭素を持つ含窒素スピロ環が99%eeで立体保持で得られ、一方LiTMP/toluene条件下には94% eeで立体反転で環化が進行した。以上のように、L-アミノ酸を任意の立体化学で4置換炭素を持つ環状アミノ酸へと変換することができた。 また立体化学の逆転現象はキラルエノラートの分子内共役付加でも見られた。アラニンエチルエステルから2工程で誘導されMichael受容体を分子内に持つアミノ酸誘導体をKHMDS/DMFで処理すると、連続する4置換-3置換炭素を持つテトラヒドロイソキノリン誘導体が単一のジアステレオマーとして95% eeで得られた。一方、同化合物をLiTMP/THFで処理するとそのエナンチオマーが単一のジアステレオマーとして91%eeで得られた。このように安価なL-アミノ酸の高度に官能基化された4置換炭素含有複素環への簡便かっ高選択的な分子変換を達成した。
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