研究概要 |
炭素資源の効果的な利用に基づいた新規機能物質群の創出にむけて、小分子を効率的に活性化する新しい手法や、高度の官能基化を選択的に行う有機合成化学手法の開拓が望まれている。本研究期間において、シアノホウ素化の合成化学的利用に関する検討と、立体選択的カルボホウ素化反応の開発を行ったので報告する。 (1)シアノホウ素化/レトロアリル化 パラジウム触媒によるアルキンの分子内シアノホウ素化は、炭素-炭素三重結合へのシアノ基とボリル基の位置および立体選択的導入に有効である。一方で、シアノボリル部位を導入するための連結部位を必要とし基質構造が限定される点で、合成化学的利用に制限があった。今回、本特定領域研究大嶌幸一郎教授のグループとの共同研究により、分子内シアノホウ素化生成物を鈴木-宮浦カップリングおよびレトロアリル化カップリングを用いて変換することにより、分子内反応や利用した連結部位の除去を伴った多置換α,β-不飽和ニトリルの合成を達成した。 (2)カルボホウ素化 我々は既に、分子内にアルキン部位を有するクロロボランが、ニッケル触媒存在下でアルキニルスズ化合物と反応し、炭素-炭素3重結合に対するカルボホウ素化生成物を与えることを見出している。この反応は有機スズ化合物からのトランスメタル化を重要なステップとして含んでいるが、有機基としてはアルキニル基やアリル基、無置換ビニル基以外を導入することは困難であった。今回、有機スズにかえて、有機ジルコニウムをトランスメタル化試薬として用いることで、より基質一般性の高い立体選択的分子内カルボホウ素化反応を実現した。
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