本研究はアニオン種を開始求核種とする不飽和カルボニル系へのタンデム型反応系を構築しアニオン種が繰り返し再生するという特徴を活かした複数結合の連続構築法を開拓し、その中で立体選択性、位置選択性、化学種選択性の基本化学を確立すると共に不斉選択性を発揮する不斉連続結合形成方法論も同時に開拓することを目的とする。本年度は以下の成果をあげた。 1 キラル配位子制御によるエステルエノラートの不斉共役付加反応における、キラル配位子-リチウムエノラート-リチウムアミドからなる3成分活性種をNMRによって観測することに成功した。 2 キラル配位子制御によるリチウムアミドの不斉共役付加反応における、キラル配位子-リチウムアミド2成分錯体をNMRによって観測することに成功した。 3 リチウムアミドの分子内オレフィンに対するアミノリチオ化で生じた有機リチウム種をさらにもう1つの分子内オレフィンで捕捉し、アミノリチオ化-カルボリチオ化タンデム型反応の開発に成功した。生じた有機リチウム種の安定化、および受容体となるオレフィンの活性化基としてフェニルチオ基が有効であることを見いだした。 4 キラルカルベン-銅錯体を触媒とするアリールGrignard反応剤によるシンナミルブロミドのアリル位アリール化反応を高い位置選択性、およびエナンチオ選択性で達成することに成功した。 5 キラルカルベン-金錯体を触媒とするエナンチオ選択性的エン-イン環化反応を開発した。これまでキラルリン配位子が有効とされてきたが、キラルカルベン配位子を用いても同程度の選択性を達成できることを示した。
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