本研究では、安価で多量に供給されるブタジエンなどの小分子を用いて、有用な炭素骨格を一挙に構築する新しい手法を確立し、超効率精密分子変換法として有機合成プロセスの新しい展開を目指した。反応としては、遷移金属触媒では今まで例の少なかったアルキル化反応に焦点を当てると共に、シリル化反応についても検討した。この反応においては、アニオン性錯体を鍵活性種とする作業仮説に沿って研究を行った。その結果、ブタジエン骨格へのアルキル化を経る付加反応を種々開発した。また、C2ユニットとしてビニルグリニャール試薬を用いる炭素一炭素結合生成反応の開発を試み、ビニル基の二量化によるC4ユニットの構築とアルキル化反応を組み合わせる事により、アリル及びホモアリルグリニャール試薬の生成を経るオレフィン類の新しい合成法を開発した。更に、これらの知見をアルキンやエンインへの反応に適用し、種々のアルキル化反応を開発した。さらに、基質としてアルキルハライドのみではなく、アルキルグリニヤール試薬を用いたアルキル化反応への展開を行った。また、アレンへの分子内および分子間付加反応や一酸化炭素を利用する環化付加反応の研究では、5員環から8員環のヘテロ原子化合物の新規な合成反応を開発した。
|