研究概要 |
本研究では、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)および誘導体を分子触媒として利用し、従来にない触媒的炭素ラジカル生成を経る不活性炭素分子の酸化反応による様々な有用な有機化合物の新合成法の開発を行っており、平成20年度は以下に示す研究成果を得た。 [1] NHPI触媒存在下アルコールと酸素を過酸化水素源とするBayer-Villiger酸化の開発 : シクロアルカノンのBaeyer-Villiger反応は過酢酸のような過酸を酸化剤に用いて行われているが, 工業的には過酸化水素を用いる方法の開発に興味が持たれている。またε-カプロラクトンはポリラクトンの合成原料として大量に製造されており, 原料となるラクトンはシクロヘキサノンの過酢酸によるBayer-Villiger反応により製造されている。本年度の研究においては, ベンズヒドロール等のアルコールをNHPI触媒による酸素酸化によりin situで生成する過酸化水素を1, 1, 1, 3, 3, 3-ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で活性化することによって, シクロアルカン類のone-potでのBayer-Villiger反応が進行し, ラクトン類が得られることを見出した。[2] フルオロアルキル側鎖を有するNHPI誘導体を触媒として用いたシクロヘキサンの空気酸化反応 : フルオロアルキル側鎖を有するNHPI誘導体を触媒として用いたシクロヘキサンの空気酸化反応によって高い選択性でK/Aオイルを得ることに成功した。F_<15>およびF_<17>-NHPI触媒を用いたとき, フルオロ基を含まないNHPI触媒に比べ良好に酸化反応が進行していることがわかった。反応を少量のZr(acac)_4存在下、トリフルオロトルエン(TFT)を溶媒として反応を行うとK/Aオイルへの選択性が飛躍的に高くなりアジピン酸の生成が抑えられることがわかった。
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