研究課題
芳香族アセチレン化合物は近年電子材料として注目を集めている。従来これらの化合部は殆どの場合Sonogashira反応により合成されている。この反応は汎用性に富むが、末端アセチレンを原料として用いるため、ホモカップリング生成物であるジインが副成する、場合により生成物が着色する、生成物に遷移金属残滓が混入するなどの欠点を有する。我々はこれらの欠点を克服したスルホンとアルデヒドを出発原料とするDouble Elimination法を創案し、様々な芳香族アセチレン化合物を合成してきた。これらの反応はワンポットで行うことができるが、反応剤や塩基を逐次添加する必要がある。本年度は究極の簡略化プロセスであるOne-Shot反応プロセスを確立した。さらにこの様にして得られる芳香族アセチレンの電子材料としての特性を評価した。従来のDouble Elimination法ではスルホンの溶液に塩基、アルデヒド、アルドールトラップ剤、さらにもう一度塩基を逐次滴下して目的スルホンを得る。一方、本年度にはスルホン、アルデヒド、トラップ剤((EtO)_2P(O)Cl)の混合溶液にLiHMDSを滴下するだけで反応がスムーズに進行し芳香族アセチレンが高収率で得られることを見いだした。さらにOne-Shot Double Elimination法を用いて種々の立体的に嵩高い蛍光性骨格を有する芳香族アセチレンやケイ素-アセチレン結合を有する化合物を合成した。これらの化合物は溶液、固体状態双方で高い量子収率を示した。特に、後者は今後の有機EL素子開発に有用な示唆を与えるものであり来年度以降有機ケイ素を有する芳香族アセチレンの検討を強力に推進する。我々は物性物理の専門家の協力を得てbis(4-(phenylethynyl)phenyl)ethyne(BPEPE)がfield-effect transistor(FET)材料として有望であることを見いだした。これら化合物の蒸着フィルムを用いてデバイスを作成しその電気特性を測定したところ芳香環に電子供与基を有する場合にはp-型の半導体特性が、電子吸引基を有する場合にはn-型半導体特性が認められた。これらの結果は芳香族アセチレンのOLEDや発光FET材料としての可能性を初めて示したものである。
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