本年度は二重脱離反応を用いて各種芳香族アセチレン系蛍光分子を合成しそれら化合物の光学特性を明らかにした。とりわけ、鎖の両末端にジフェニルエテニル基が導入されたフェニレンエチニレン化合物は粉末状態で高い量子収率(0.47)を示した。これを有機EL発光材料としてデバイスを作成したところ、2.5%という極めて高い外部量子収率が達成された。 フェニレンエチニレン鎖をアルコキシ基として有するメタクリル酸モノマーとアクリルアミドモノマーをパーフルオロアルカノイルパーオキシド開始剤により共重合した。得られた共重合体のキャストフィルムを解析したところフルオロアルキル基とフェニレンエチニレン鎖がフィルム表面に凝集していることが明らかとなった。その結果、フィルム表面の疎水性が著しく向上するとともに、フィルム断面に紫外線を照射すると、表面だけが青色に発光する現象が認められた。 以前に我々が二重脱離法により簡単に合成できることを明らかにしていたジベンゾシクロオクタジインの歪んだアセチレン結合に触媒を用いることなくアルキルリチウムが付加することを見いだした。これは触媒を用いないアセチレン結合への求核付加の初めての例である。反応は単なる求核剤の付加に留まらず、生成したアルケニルアニオンが残るもう一つのアセチレン結合に渡環的に求核付加する。生じたアルケニルアニオンに種々の求電子剤を反応させることにより1、4-二置換ベンゾペンタレン骨格が得られた。
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