本課題では、1)中性に近い条件下でのアルケンのエポキシ化反応の開発、2)植物油などバイオマス原料に適用可能なアルケンの酸化的切断反応の開発、3)アルケンやアルキン近傍のアルコール選択酸化反応の開発、の3テーマを新規触媒の開発を鍵として推進する。本年度(平成18年度)は、そのうち2)、3)について重点的に研究し、2)では、植物油脂、すなわち長鎖アルキル基を分子内に有するエステルの二重結合部分を選択的に酸化し、ジカルボン酸に変換させる反応を確立した。3)では白金等金属粉末を触媒としたアリルアルコール類の高収率合成について前年度に引き続き幅広く触媒のスクリーニングを行い、より実用的な反応条件の開拓に成功した。 植物油脂への本酸化技術の適用を確認する試金石として、比較的安価でかつほとんどの油脂に含まれているオレイン酸の選択酸化反応を検討した。30%過酸化水素水を酸化剤とし、酸性条件下タングステン金属触媒を用いることでオレフィンを効果的に切断し、対応するアゼライン酸、ノナン酸をそれぞれ83%および89%の収率で得た。本手法は90℃という穏やかな加熱下5時間で完結する。また、昨年に引き続き過酸化水素によるアリルアルコール類の酸化反応を検討し、白金(黒)触媒の量1モル%で100gのシンナミルアルコール(桂皮アルコール)からシンナムアルデヒドが82.6g、84%の収率で得られることを見出した。反応時間も2時間以内であり、より高効率かつ実践的な反応系を確立できた。
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