生体系は階層的に独立した分子や組織が協同的に作用し驚くべき機能を生み出している。デバイス設計がトップダウンからビルトアップ型に移行している現在、その機能を十二分に引き出すためには、分子材料を単純に積層、配列するだけではなく、独立した機能を有する分子材料を高次に組織化し階層性を制御して配列することが重要となる。ここでは、単一鎖レベルで、(光吸収・電荷分離・電荷輸送)過程や(電荷輸送・電荷再結合・発光)過程などの高次機能を有するDNA/共役ポリマー高次組織体を合成し、その高次構造や成分間の階層性について、光吸収・発光特性、円偏光二色性等から定量的に評価した。 高次組織体の階層構造を評価する目的で紫外可視域における円偏光二色性(CD)を測定した。DNAに組織化した共役ポリマーであるポリアニリン(PAn)の吸収帯に誘起CDが認められたことから、PAnはDNAのらせん構造を反映した形で組織化していることが明らかとなった。このCDの大きさをDNAとPAnの複合比をかえて測定したところ、1:1の複合比において誘起CDは飽和した。このことはDNAとPAnが1:1の比率で組織化していることを示している。また、より詳細な検討を行う目的で、赤外振動域におけるCDも測定した。PAnのキノンジイミンの振動に基づく波数域で誘起CDが確認されたことから、上述したようにPAnの主鎖骨格はDNAの二重らせんに沿って配列していることが明らかとなった。PAnとDNAは静電的な相互作用で組織化しているため、溶液中ではpHを変えることで、可逆的にDNAからPAnを着脱できることも明らかとなった。
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