ニッケル錯体やパラジウム錯体を用いるC-Cカップリング反応により、新しいパイ共役ポリマーを合成した。合成例としては、(1)Th(R)-(π)-Th(R)(Th(R)はアルキル基を有するチオフェン単位、(π)はπ共役単位を表わす)より構成されるポリマー、(2)C_2対称のキラリティーを有するポリフェニレン誘導体、(3)アミノ基を有するポリフェニレン型ポリマー誘導体、(4)ジアザボロール基を有するパイ共役ポリマー等が挙げられる。これらのパイ共役高分子のうち、Th(R)-(π)-Th(R)より構成されるポリマーのうち、3種のポリマーについて強い自己集積力を有しまた基盤界面で高秩序固体構造を形成することが分かった。最近の多くの研究により、高秩序固体構造の形成とパイ共役ポリマーのキャリア移動度の関係が着目されており、本研究により高秩序固体構造についての知見を与えることができた。また、パイ共役ポリマー中のキャリア種の解析を名古屋大学の黒田新一教授(本特定領域研究の計画班班員)との共同研究により、ESR法により行ない、キャリア種の分子内における拡がり等を明らかにした。また、上記の新に合成したパイ共役ポリマーの多くは発光性を有するので、溶液及びフィルムについて蛍光の測定を行ない、50%以上の高い蛍光収率を示すものがあることを明らかにした。パイ共役ポリマーの固体秩序構造については、おもにX線回析法により解析し、固体秩序構造の形成に側鎖アルキル基の関与が重要であることを明らかにした。
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