研究課題/領域番号 |
17067007
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 新一 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20291403)
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研究分担者 |
伊東 裕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10260374)
丸本 一弘 筑波大学, 大学院・数理物質科学科, 准教授 (50293668)
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キーワード | 共役ポリマー / 電子スピン共鳴 / 電界効果デバイス / ポーラロン / ポリアルキルチオフェン / フラーレン / バイポーラロン / 両極性動作 |
研究概要 |
高分子デバイスにおける電荷担体であるポーラロンやバイポーラロンの研究をESR法により行い、下記の成果を得た。(1)立体規則性ポリヘキシルチオフェン(RR-P3HT)の電界効果トランジスタ(FET)をSiO_2絶縁膜上に作製し、デバイス駆動状態において、FETチャネル内のキャリアをESR法により直接観測することに成功した。その結果、チャネル内のキャリア濃度の変化がグラジュアルチャネル近似理論による予測と一致することを明らかにし、FET動作に関わるキャリアがポーラロンであることを検証した。同様の結果を低分子であるペンタセンのFETでも観測した。(2)有機絶縁膜であるパリレンを用いたRR-P3HTの金属-絶縁体-半導体(MIS)デバイスを開発し、電場誘起ESRの低温観測を行った。その結果、室温の高濃度電界注入状態で観測されるバイポーラロン(ポーラロン対)の形成が、低温では促進されることを見出した。この結果は、スピン対形成によるエントロピーの減少を考慮した統計モデルにより定性的に説明された。(3)RR-P3HT/フラーレン(PCBM)複合体のMISデバイスを作製し、正負のキャリアとなるRR-P3HT上のポーラロンとPCBMラジカルアニオンの電場誘起ESR信号を検出した。また、PCBMの複合化によるRR-P3HTの界面分子配向の変化を、信号の角度依存性から明らかにした。一方、光誘起ESR(LESR)測定を行い、複合体のバルクにおいてもPCBM濃度に依存した分子配向性の変化を示した。また、光キャリアの4分子型再結合が観測され、バイポーラロン(ポーラロン対)の形成が複合体でも示唆された。(4)低分子であるルブレン単結晶のFETを作製し、ESR観測に成功した。ESR信号のg値の角度依存性はバルクの結晶構造からの予測とは一致せず、絶縁膜界面でルブレン分子が傾いた配向をとることが示唆された。
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