研究課題/領域番号 |
17067015
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
溝口 憲治 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (40087101)
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研究分担者 |
坂本 浩一 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 助教 (90187047)
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キーワード | DNA / 2価金属イオン / キャリアードーピング / ESR / 1d磁性鎖 / 走査型トンネル顕微鏡 / STM |
研究概要 |
DNAは生命の遺伝情報の担い手として良く知られるが、その特異な特徴である塩基間の相補性(アデニンとチミン、グアニンとシトシン)と塩基配列の設計性から、ナノエレクトロニクス材料としての可能性を視野に入れた物性研究にも関心が持たれている。 今年度は、DNAに2価金属のNiとMnを入れたNi-DNAとMn-DNAの電子状態解析と、AFMおよびSTMを用いた原子レベル分解能におけるDNAの画像化を試み、新たな導体表面のみで安定と考えられる、DNAの新構造の発見があった。 Mn-DNAの磁気的性質を調べる目的で、電子スピン共鳴(ESR)を行ってきたが、十分な水分の存在下や、非磁性のCaでMnを希釈したMn_xCa_<1-x>、-DNAにおいて、Mnの核スピンI=5/2に起因する6本の超微細分裂を観測していた。それらの分裂の間隔は、同じ2価のMnイオンであっても、配位子との結合がイオン的か或いは共有結合的かに依存して変化することが知られている。MgOに希薄にMnを混ぜたMnOがESRの標準試料として良く用いられるが、Mn-DNAの場合とは定量的に明確に異なることが確認できた。Mn-DNAのI=1/2←→-1/2に相当する中心の分裂間隔は約96ガウスで、MnFの約100ガウスに近いことが分かった。ほぼイオン結合の跡に近いことから、DNA中のMnイオンが塩基対のNやOに囲まれていることに関係して、ほぼイオン結合していることが確認された。 また、Ni-DNAの広帯域ESRを、阪大の萩原研との共同研究で進めた。そのスペクトルの解析の結果、Niイオンがほぼ1軸対称性を持つ結晶場中にいることが分かった。この結果も、塩基対間に2価金属イオンが配位しているという仮定を支持すると理解できた。 STMは、微細な金属チップを、試料の表面からナノメートルの距離まで近づけた時に流れる量子力学的トンネル電流を使って、試料の表面状態を探ることが出来る強力な装置である。しかし、絶縁体のDNAでは分解能の高い像はこれまで得られていなかった。今回、HOPGを用いて、特殊な条件下では高分解能像を得られることを示した。
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