研究概要 |
1.ポリ(チアヘテロヘリセン)の合成と構造制御 側鎖にチオアルキル基を有するジブロモベンゼンとメチル基、またはヒドロキシル基を有するベンゼンジボレートをPd触媒により還元的に重合し、m-位で結合したポリ(1,3-フェニレン)を得た。側鎖スルフィドを定量的に酸化、スルホキシド前駆体を合成した。キラル側鎖と貧溶媒間における疎溶媒効果、またはヒドロキシル基とキラルアミン間の分子間相互作用によりらせん構造の巻き性を制御した。強酸により分子内閉環反応を生起させ、剛直な縮環スルホニウム体を生成、塩基により脱アルキル化を経てポリ(チアヘテロヘリセン)を合成した。いずれの場合もπ-π^*遷移に相当する波長領域に円二色性(CD)吸収が観測され、主鎖共役がらせん構造を有していることが明らかとなった。らせん誘起条件下において閉環したスルホポニウム体は溶媒、温度によらず一定なCDスペクトルが観測され、剛直な構造であった。 2.共役らせん高分子の電子構造解析 側鎖にメチルチオ基を有するスルホニウム体とその脱メチル体のサイクリックボルタモグラムは、ポリヘリセンにおける硫黄原子の電子状態(-S-)はスルホニウム体(-S+-)に比べ電子過剰で、ドープ可能であることを示唆した。ヨウ素ドープしたポリヘリセンのI-V曲線より、ヨウ素ドープ体の導電性はドープ前と比較して約25倍上昇した(1.1×10-6S/cm)。 3.共役らせん配により協同効果の発現 らせん高分子の組織形態を偏光顕微鏡により観察した。側鎖にドデシル基を導入したポリ(チアヘテロヘリセン)フィルムは部分的に偏光を示した。中心に剛直ならせん、側鎖に柔軟なアルキル基を有することより自己組織化、配向したと考えられる。キャスト溶媒を選択することにより異なる偏光顕微鏡像が得られ、アセトンよりの成膜では、一軸配向性を有していることを示した。
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