研究課題/領域番号 |
17067018
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
阿部 修治 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノテクノロジー研究部門, 副研究部門長 (30356373)
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研究分担者 |
下位 幸弘 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノテクノロジー研究部門, 主任研究員 (70357226)
片桐 秀樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 企画本部, 企画主幹 (60344206)
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キーワード | 共役高分子 / ポーラロン / 電子スピン密度 / 密度汎関数法 / ポリチオフェン / ポリジアセチレン |
研究概要 |
本研究課題は、特定領域研究「次世代共役ポリマーの超階層制御と革新機能」のA04班「革新機能の探索」の一翼を担い、共役高分子の輸送特性の飛躍的改善や革新的機能発現のため、ナノスケールの構造と機能の相関、特にポーラロン、ソリトンなどの荷電・スピン担体、発光にかかわる励起子などの素励起の存在形態と輸送特性の基礎的理解を目指すものである。課題採択前から実験グループと緊密に連携して準備研究を行い、迅速に課題研究を開始した。まず、有機薄膜トランジスターなどへの応用が注目されるポリチオフェンならびにオリゴチオフェンに対して、密度汎関数法を用いた計算を行い、ポーラロンの構造を理論的に解明した。具体的にはオリゴチオフェン14量体のポーラロンのスピン密度を研究した結果、2種類のハイブリッド型密度汎関数(UBHandHLYPとUB3LYP)の中間的な状況で、実測されたポリアルキルチオフェンのESRスペクトルの異方性を半定量的に説明することに成功した。この成果をまとめ、実験グループと共著で論文として出版するとともに、日本物理学会秋季大会(2005年9月)にて発表した。これを踏まえ、置換基効果として側鎖にメチル基を立体規則的に導入したオリゴチオフェンについて検討した結果、ポーラロンの形状が非対称化することを明らかにした。さらに、電子物性に重要と考えられる分子間相互作用がポーラロンの性質に及ぼす影響について研究を行い、オリゴチオフェン4量体2分子を用いた計算によって、ポーラロンがいくつかの分子に非局在する可能性があることを明らかにした。この成果は2006年7月に開催される合成金属の科学と技術に関する国際会議で発表予定である。また、優れた光学的性質を示すポリジアセチレンについて、固相重合の初期プロセスなどの解明を目指し、電子相関効果を取り込んだ量子化学計算を用いて予備的な理論研究を行った。
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