研究概要 |
当該研究は,長波長単一InAs量子ドットと微小光共振器の共振モードとを結合させ,長波長光ファイバー通信用単一光子源を開発すること、単一光子源の動作確認として,一度にただ一つの光子が発生していることを2経路同時観測によって確認すること、量子ドットから発生する光子対について光子相関測定し,量子科学で最も重要なエンタングルした光子対発生の基礎を固めること、さらに高速に光子を検出できる単一光子検出器を開発することを目指している。 本年度は,単一光子発生源では特に高い量子効率で単一光子を生成することが必要となることに関連して,量子ドットを作製する直前の基板表面を原子レベルで平坦化することにより、ドットの発光強度が増大することを見いだした。また励起子より1光学フォノンエネルギーだけ高い状態を準共鳴励起することにより、線幅約20ueVの純粋な正の荷電励起子発光が得られることを明らかにした。これに加えて、励起フォトンの持つ円偏光状態を92%以上という高い確率で電子スピンに置き換え、さらにこれを同じ円偏光状態に変換する総合効率で85%を達成した。これは量子情報変換を実現する基礎となる。従来量子ドットからもつれあい光子対を生成する上で大きな懸案となってきたのが,量子ドットの異方性による励起子状態のエネルギー分裂であった。今年度, 量子リング構造にすると、励起子分裂がドット構造より一桁低くなることを見いだした。効率の艮い単一光子源を実現するには,微小光共振器の共振モードに発生した光子を結合させ,これを外部に指向性良く取り出すことが必要である。フォトニック結晶の共振モードとの結合も考慮してFDTD計算を進め、共振Q値75万の共振モードを見いだした。現在その製作を検討中である。さらに平成18年度に単一光子検出器の動作を500MHzまで高速化したが,これをさらに800MHzまで高速化に成功した。
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