研究概要 |
MEMS技術では,アクチュエータや立体構造が形成できるので,可変の光通信デバイスや機能の高い光学部品を実現するために有効である.本研究ではMEMS技術とシリコンナノ加工技術を組み合わせ,広帯域の可変格子フィルタや光スイッチを研究した.光通信の自由空間クロスコネクトやADD/DROPに必要なマイクロミラーの高機能化の研究を進めた.光通信用デバイスにおいては温度無依存の特性は不可欠な特性である.低電圧駆動のマイクロミラー光スイッチを提案したが,引張応力の必要なヒンジ部に用いた材料(Si3N4)の熱膨張係数が構造部(Si)と異なることより,光路切換えの角度制御において大きな温度依存性を示した.これを改善するために,シリコン材料で結晶化による引張応力を発生するアモルファスシリコンを用いて試作した.これにより100℃の温度上昇においても温度依存のないミラースイッチを実現した.多波長スイッチを構成し,スイッチの基本動作を確認した.また共鳴格子の周期をマイクロアクチュエータにより変える光フィルタの方式を提案しているが,今回は光通信波長帯域に応答をもつ周期可変の共鳴格子フィルタを製作した.アクチュエータに50Vの電圧を印加することにより自立格子の周期を860nmから875nmに変えることができ,フィルタのピーク波長を1523nmから1531nmまで変化できた.最大反射率は83.7%であった.フィルタ帯域は基板からの反射光のため期待したほどには狭くならなかった.Si基板を取り除いたデバイスを作製し反射特性を測定すると,フィルタ帯域を狭くできることが分かった.これらの結果より,MEMSのアクチュエータを接続することで,広い帯域で波長が選択できるフィルタが可能であることを示した.
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