研究概要 |
シンボルレートを維持したまま,ビットレートを上げることができる多値光変復調方式は,将来の光通信システムを大容量化する有力な手段である。これまでの光通信システムでは,強度変調・直接検波のみが用いられてきたが,多値変復調方式を本格的に導入する場合には,強度変調にかわる位相変調の利用,直接検波にかわるヘテロダイン/ホモダイン検波の利用を検討する必要がある。 今年度は,この目的のためにホモダイン位相ダイバーシティー技術とデジタル信号処理を用いたコヒーレント光受信器を試作した。この受信器は,ホモダイン検波によって得られた信号光複素振幅のsinおよびcos成分から,デジタル信号処理により変調成分を抽出するものである。この受信器を用いれば,任意のIQ変調に対応が可能である。 この受信器を用いて,M-array PSK信号(M=2,4,8)の変復調実験を行った。BPSK信号はSSB変調器の一方のマッハ・ツェンダー変調器のみを,QPSK信号は両方の変調器を用いて発生させる。8PSK信号は,QPSK信号に±π/4の位相変調を加えることにより実現している。シンボルレートは10Gsymbol/sである。送信用レーザおよび局発用レーザは半導体DFBレーザであり,線幅は約150kHzである。コヒーレント受信器では,サンプルレート20Gsample/sでAD変換を行っている。符号誤り率は100ksymbolのデータを用いてオフラインで測定し,エラーフリーの良好な特性が得られたが,8PSKでは,レーザの位相雑音および変調器の直列接続に伴う波形の乱れにより,過剰なペナルティーが生じている。
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