| 研究概要 |
今年度は溶液内および超高真空極低温にて金属電極に単分子を導入しその伝導度計測を行った。現在、分子エレクトロニクスへの応用から単分子の伝導特性が注目を集めている。しかし分子の存在、架橋状態が不明、分子と金属の接合部がAu-Sに限定など単分子の伝導特性の研究には課題が多い。そこで、Au-S以外の金属-分子接合系を探索すること、そして伝導度計測と分子の振動スペクトルの同時計測により分子の架橋状態を規定して単分子の伝導度を決定することを目的として研究をおこなった。
まず新たな金属-分子接合系の構築に関しては、ベンゼンの末端をイソシアニド,イソニトリル、チオール、アミド、カルボキシル基で置換した分子をエーテル中に溶解し、溶液内にてAu, Pt接合を機械的に作製した。接合破断直前に単分子が金属電極間を架橋することが期待される。その結果、コンダクタンストレースにおいて、伝導度が階段状に変化し、その1段の高さがほぼ一定であることが明らかになった。1段が1分子の伝導に相当することを示している。そして、Au-CN, Pt-CN, Pt-Sなどの新規接続部位をもつ単分子について伝導度を決定し、特にPt-Sでは従来のAu-Sより1桁高い伝導特性を示すことを明らかにした。
伝導度と振動スペクトルの同時計測に関しては、Pt電極に水素、ベンゼン分子をin-situで導入することで単分子計測を行った。その結果、水素雰囲気中では水素1分子を架橋したPtの単原子ワイヤーが形成されていく様子を明らかにすることに成功した。ベンゼンについても伝導度と振動スペクトルの同時計測に成功した。
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