研究概要 |
今年度は溶液内および超高真空極低温にて金属電極に単分子を導入しその伝導度および振動スペクトル計測を行った。 電気化学STMを用いて、溶液内にて単分子接合を作製しその伝導度計測を試みた。単分子接合は分子を含む溶液内にてAu接合を機械的に破断させることで作製した。その結果、金属接合破断直後に接合の伝導度が階段状に変化する様子が観測された。1段の伝導度変化がほぼ一定であることから、この1段の伝導度変化から1分子の伝導度を決定した。その結果、2置換ベンゼンの伝導度が置換基の位置に依存することなどを明らかにした。 また超高真空、極低温で単分子の伝導度と振動スペクトルの同時計測もおこなった。室温ではC60や金属内包フラーレンの単分子接合形成をAu,Ag電極を用いて試みた。その結果、金属電極によっては単分子接合を形成しないこと、また単分子接合の伝導度の分子種、金属電極依存性を明らかにした。 極低温ではAu, Ag, Cu, Co, Ni, Pd電極に架橋した水素単分子、ベンゼン単分子の振動スペクトル計測を試みた。その結果、Co電極に架橋した水素については、水素単一分子接合を伸長した際の伝導度変化を定量的に評価することで、Co単原子ワイヤーが形成される過程を明らかにすることに成功した。さらに、水素中におけるAu接合ではフォノンにより誘起された水素単分子接合の構造転移を示唆する結果を得た。そしてこの構造相転移は重水素接合では観測されず水素中でのみ観測される事があきらかとなった。水素と重水素の振動エネルギー、および構造転移に必要な活性化エネルギーを考慮することで同位体効果を説明する事に成功した。
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