研究概要 |
本年度には、極めて近接した原子単位で平坦な電極の候補となる、半導体基板のへき開観察を可能にするような装置改良を行った。また分子の伝導測定に欠かせない自己組織化膜の成長において異なった長さの分子が混在する場合に観察されるSTM像の解析手法を開発した (1)半導体へき開面を近接した電極として用いる技術の開発 単一分子の伝導測定にかかわる研究では原子単位で接近した電極を如何に作るかが鍵となるが、走査型プローブ顕微鏡での観察を可能とするような原子的に平坦な電極は作製が困難な状況にあると考えられる。そこでわれわれは量子井戸やレーザー応用に開発された層状成長した半導体構造を利用し、これをへき開して横方向から観察することでいままでになかった近接した平坦な電極を作ろうとする。本年度はへき開面の端面にある層状成長された部分において走査プローブ顕微鏡像を観察する技術を開発し、nmオーダーの層状構造を観察することに成功した。今後はそれに分子を接続する技術に発展させていく。 (2)異なった長さの分子が混在する自己組織化膜成長様式の決定 単一分子を測定しようとするとき、均一な膜をマトリックスとしてそのなかに一分子を挿入するという手法が有効である。しかしわずかな長さの違いしか持たない分子を混在させたときに得られる構造やそのSTM像の現れ方などはまだ研究がなされていない分野である。本年度われわれは異なった長さのアルカン鎖をもつアルカンチオール分子(CH3(CH2)nSH ; n=8,12,16) が混在するSAM膜を形成し、その混在した構造決定とSTM測定における像の見え方に関する研究を行った。その結果、長さの異なる分子が混在したとき周辺の広い領域に渡って構造が変化することを見出した。
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