研究課題
本年度においては、以下の研究を行い成果を収めた。(1)前年度までに金表面に自己組織化的に形成されたアルカンチオール分子膜においてSTM-IETSピークを検出したが、これはSTM-IETSスペクトルとして世界的に見ても最高の分解能であり、かつ種々のモードを検知した最初のデータである。本年度においては同位体置換による官能基の特定と、第一原理・グリーン関数計算手法を用い、現在得られる最高精度の計算シミュレーションとの比較を行った。その結果、両者が驚くほどの一致を見せた。これは理論シミュレーションと実験が両者とも高い精度で行われた結果と考えられる。全体に良い一致を見せる中で、C-H伸縮振動の強度が計算で小さく見積もられていることが最大の不一致として観察された。従来、分子の骨格を伝導するIntra-moleculeモードに対応する伝導経路のみが考慮されていたが、分子から分子へ飛び移るIntra-moleculeモードの存在を考えに入れるとこの違いがうまく説明できる。分子から分子への飛び移りでCH2伸縮成分の強度が大きくなり実験で見られるような強いC-H伸縮モードの強度となった。結果は2010年のPhys.Rev.Lett.に掲載された。(2)単一分子磁石であるフタロシアニン+ランタノイド金属錯体の吸着構造・電子構造を決定しそのスピン状態について高分解能トンネル電子分光(STS)を用いて、フェルミ準位付近の近藤状態の検知した。また分子の構造変化によって生じる単分子磁石のスピン状態について検討した。これは電流の制御にスピンを用いる、分子スピントロニクスという分野で注目される要素技術であり、本特定領域でもスピン制御による伝導を考える上で不可欠な内容である。
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