研究課題/領域番号 |
17069006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川合 真紀 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (70177640)
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研究分担者 |
高木 紀明 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (50252416)
白木 将 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (80342799)
金 有洙 独立行政法人理化学研究所, 表面化学研究室, 研究員 (50373296)
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キーワード | 表面・界面 / トンネル顕微鏡 / 化学吸着 / 単結晶表面 / 分子エレクトロニクス |
研究概要 |
金属電極に吸着したナノリンク分子と流れる電流との相互作用によって引き起こされるダイナミクスは、ナノリンク分子の電気伝導を考える上で非常に重要なテーマである。Cu(110)表面に吸着したCO分子を最も基本的なナノリンク分子として考え、トンネル電子注入によって誘起されるCO分子のホッピング運動をバイアス電圧、試料温度の関数として調べた。極低温ヘリウム温度(4.7K)では、トンネル電子注入によるホッピング運動は、低バイアスでは誘起されないことがわかった。Pd表面では、COの伸縮振動に相当する〜±250mVでホッピング運動が誘起されるのとは対照的である。一方、試料温度を上げていくと、CO伸縮振動に相当するバイアス電圧でホッピング運動が誘起されることがわかった。ホッピング運動は、まずCOの伸縮振動がトンネル電子によって励起され、CO伸縮振動に蓄えられた振動エネルギーがCOの並進運動に移動し、並進運動の量子数が拡散障壁を越えられるまでに十分大きくなることことで起きる。温度が上昇すると、並進運動や束縛回転運動が熱励起され、これらの振動モードの励起状態のポピュレーションが増える。エネルギー緩和を引き起こす振動モード間の非調和結合が、並進運動や束縛回転運動の量子数(振幅)の関数として変化することを考慮すると、温度上昇によるホッピング運動の高効率励起が説明できることがわかった。エネルギー移動の効率が、低エネルギーの並進運動・束縛回転運動の振幅によって大きく変わる、すなわち、COの表面における振動の多次元広域ポテンシャル局面が、調和近似で表されるものから大きく歪んでいることを意味する。
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