研究概要 |
平成18年度は研究計画の2年目に当たる.研究実施概要と成果は以下の通りである. (1)本研究の主目的のひとつは,金属に接合した分子の電子状態,特にフェルミ準位近傍の電子状態を明らかにすることである.本年度は電気伝導に関するデータが豊富なアルカンチオール-金属系を取り上げた.準安定原子電子分光(MAES)と紫外光電子分光(UPS)による系統的な実験から,アルカンチオール(C_nH_<2n-1>SH, n=1-3)-Pt(111)界面において,S3p由来の金属的な電子準位が形成されることなどが明らかになった.この成果は既に公表済みである.また森川(阪大産研)による理論計算との比較を行い,電気伝導特性と界面電子状態の関係を考察した.この論文は,ほぽ完成しているので,早急に投稿する予定である (2)準安定原子電子放射顕微鏡の整備をおこなった.これにより,0.3μm程度の空間分解能で表面反応や機能性の時間空間解析が可能となった.この成果の一部は既に公表済みであり,全容についても早い時期に投稿の予定である. (3)初速度の揃った高輝度準安定原子源の設計・製作をおこなった.この原子源は顕微鏡の観測時問の短縮をもたらすばかりでなく,準安定原子のスピン状態を選別することによって表面最外層におけるスピン解析が可能となるため,分子-電極接合系における電子空間分布の詳細な情報が得られるものと期待される.現在,μメタルチャンバーおよび高真空排気ユニット(共に18年度備品)の組立てを完了し,性能評価を進めている. (4)金属表面に結合した分子において,外部刺激(熱や光)に可逆的に応答する系の探索も本研究の大きな目的である.現在,メタロセン系のスピンに着目して実験を進めている
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