研究概要 |
本研究の目的のひとつは, 金属に接合した分子の電子状態, 特にフェルミ準位近傍に誘起される電子状態を準安定原子電子分光(MAES)や紫外光電子分光(UPS)によって明らかにすることである, 本年度の測定対象をよび主な結果は, 以下の通りである. (1) C_6H_5S-Au系を取り上げ, フェルミ準位直下に金属的な誘起準位が形成されること, 金属との接合によってS3p-Bzπ間の共役が弱まることなどが見出された, 前年度に実施したC_6H_5S-Pt系との比較から, フェルミ準位の状態密度と単分子電気伝導度の相関を考察することができた.成果の一部は論文にまとめた(投稿中). (2) Au表面上でペニングイオン化過程が生じることを見出した(投稿中). (3)電気伝導度が極めて高いC_<60>-Pt系の実験を行い, 森川ら(大阪大学)らによる理論計算との比較から, フェルミ準位直下に金属的な誘起準位が形成されること, 金属波動関数がC_<60>中に広がっていることなどが判った(投稿中). (4) BCPと呼ばれる有機分子を取り上げ, 有機一金属界面に形成されるギャップ状態のキャラクタリゼーションを行うとともに, 金属電極からのホール注入障壁の膜厚依存性を実験的に決定した(投稿中). 準安定原子電子放射顕微鏡に応用する準寮定原子ビームの開発を進めた.国際的にも最高輝度のビーム源が得られているが, 初速度分布などについて性能評価を行っている.
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