研究概要 |
本研究では「ナノスケールで制御された分子-基板接合系の構築と電子物性」の研究を行っている. 平成20年度は, 具体的な系として以下の研究を行った. (1)Si(111)-Hと直鎖アルキル分子の液中での熱ラジカル反応でsi(111)基板上にアルキル基を共有結合させた, C12, C14, C16, C18の4種のアルキル基のCH伸縮振動が透過FTIRでS/N良く観測され, 良質のアルキル単層膜が作製されたことがわかった. またXPSで吸着量を評価した. 次に水銀(Hg)-アルキル基-高ドープSi基板を構築して電気伝導測定(I-V測定)を行った. 炭素鎖が長くなるに従い電気伝導度が下がることがわかった. さらに, サンプルに-2V以上バイアスを印可すると単層膜の絶縁破壊が生じた. 基板からアルキル基のLUMO準位に電子がトンネルして, 一時的に負イオン状態が生じて解離するモデルを提案し, 理論グループの赤木らの計算結果と比較検討した. (2)Si(100)表面をエチレンや2メチルプロペンで化学修飾し, その上に強力なアクセプター分子であるF4TCNQを蒸着し, 吸着状態と電荷移動機構をUPS, XPS, NEXAFS, STMで研究した. (3)Cu(100)表面に名古屋大学山ログループで合成されたDBP-S分子を吸着させ, 吸着状態をHREELS, SPring8における内殻光電子分光(辛グループ)および極低温STMで研究した. 低温ではDBP-S分子のS=P結合は保存されているが, 室温以上になるとS=P結合が切断されてCu(100)表面に吸着することが分った.
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