研究概要 |
本研究では, 分子と電極との接合, すなわち, 「ナノリンク」の電気伝導特性の系統的な物性評価を可能にする新パイ共役骨格の構築と電極と分子とのスムースな電気的接合を可能にする新アンカー官能基の探索を目的とする. 具体的には, 架橋オリゴ(p-フェニレンビニレン)およびヘテロアセン骨格を基本構造に用いた新規π電子系分子の合成し, それらの構造解析, 物性評価を行うとともに, 他グループとの有機的な共同研究により単一分子の電気伝導特性の解明に取り組む. 本年度の成果は以下の3点にまとめられる. 1) 系統的評価を可能にする新パイ共役骨格の構築 : 新たな架橋オリゴ(フェニレンビニレン)類として15族リンと13族ホウ素を導入したホスホニウム・ボラート架橋体の合成に取り組んだ. (ボリルフェニル)(ホスファニルフェニル)アセチレンから分子内二重環化反応が自発的に進行し, 双性イオン構造をもつ架橋スチルベンが得られることがわかった. この方法をもとに一連のラダーπ電子系を合成し, それらの光物性, 電気化学特性を明らかにした. 大きく分極した電子構造を反映して, 長波長での発光など, 特異な物性をもつことがわかった. 2) 縮環オリゴチオフェンの電荷移動度の評価 : 阪大竹谷純一准教授との共同研究により, 可溶性シリル置換基を導入した縮環オリゴチオフェンを用いて, 単結晶中での分子配向性と電荷移動度との相関を明らかにした. 3) 新アンカー官能基の探索 : 電極と分子とのスムースな電気的接合を可能にするアンカーとしてジベンゾホスホールスルフィドに着目し, その誘導体合成を進めてきた. このアンカー部位を両末端にもつπ電子系の電気伝導の評価を第3班の木ログループとの共同研究により進め, その電気伝導に対し, 軌道の広がりが重要な役割を担うことを明らかにした.
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