研究概要 |
9月末から10月末に^<12>C標的を用いたハイパー核ガンマ線分光実験E566を行った。この実験では、KEK-PSK6ラインにおいてSKSスペクトロメータとゲルマニウム(Ge)検出器群Hyperball2を用い、^<12>C(π^+, K^+)反応によって^<12>_ΛC,^<11>_ΛBを生成しこれらからのγ線を測定した。データ解析の途中結果として^<11>_ΛBの基底状態二重項間のγ遷移(7/2^+->5/2^+,262keV)と、^<12>_ΛCのコア第一励起状態から基底状態二重項へのγ遷移のうち一方(1^-_2->2^-,2.67MeV)を発見した。 J-PARC加速器における本格的なハイパー核ガンマ線分光実験に向けて必要となる、新しいGe検出器群Hyperball-Jの設計とそのための開発研究を行った。さまざまな検討の結果、40台程度の大型(相対効率60%-90%程度)の個別型Ge検出器を用いることとし、シミュレーションを行い十分高い検出効率が得られることを確かめた。さらに、Ge検出器の冷却方式を、従来の液体窒素によるものから機械式冷凍機によるものに変更するための開発を開始した。また、上記のE566実験のビームタイム中にwaveform digitizerで記録したGe検出器の波形データを用いて、pile-upした波形の分離やbase line補正をオフライン解析によって行うためのソフトウェア開発を開始した。バックグラウンド抑止には高速のPWOカウンターを使用することとし、いくつかのPWO結晶サンプルについて冷却しながら発光量と崩壊時間の測定を行った。さらに、放射線損傷を受けた現有のGe検出器をいろいろな条件でアニールし、また一部のGe検出器については結晶交換や修理も行って、これらの性能を回復させてHyperball-Jのために使用できるようにした。一方、J-PARCで最初に行う実験について検討し、1.5GeV/cの(K^-,π^-)反応によるハイパー核ガンマ線分光のシミュレーションを行った。
|