本研究では、ストレンジ・クオークを2個含むバリオンであるグザイ粒子が原子核に束縛された状態、グザイハイパー核を世界で初めて観測することを目的としている。 束縛状態のピークのエネルギーによりグザイ原子核ポテンシャルの実部の大きさの情報を、また、そのピークの幅の測定によりポテンシャルの虚部の大きさの情報を引き出すことが可能である。これらの情報は、現在のところ全く実験的な情報がないに等しいグザイ粒子と核子との間の未知の核力に関する、新たな重要な情報をもたらすこととなる。本年度は、この研究のために必要となる高計数率で動作するビームライン最上流に設置する多線式のワイヤーチェンバーとその読み出し回路系の開発、及び、製作を行った。アノード間隔が1mmのチェンバーからの多チャンネルの読み出しのため、新しい読み出しとエンコード方式を導入した回路系の開発に成功している。全体の性能評価のために、加速器からのビームによる性能試験も行った。また、ビームライン下流にあるドリフトチェンバーの開発と製作も行った。このドリフトチェンバーも従来より高計数率での動作が可能となるよう、3mmという狭いドリフトセル構造を持つものを開発した。放電対策などを施すことにより所期の性能を達成できることが確認された。加えて、K中間子スペクトロメーターのためのトリガー検出器系のための部品、あるいは信号処理回路の購入や製作なども行った。高計数率飛跡検出器のためのプリアンプ・ディスクリボードの作成を行った。これを使って、高強度ビーム環境下での飛跡検出器の性能評価を行った。これらの開発によって得られた成果については、日本物理学会等において発表を行った。
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