研究概要 |
K中間子が原子核に深く束縛された系では、K中間子と原子核の相互作用により原子核自身が縮小し、より高密度の物質になる事は理論的に予言されているが、この理論の予言には現在でも複数の計算結果があり、実験による計測結果が待ち望まれている.今回、2004年に発表した論文を統計的な面と、検出手法の両面で補強するための実験を実行した.我々は、新たに4He(K-,p)反応に特化した実験装置を設計、構築し、より不定性の少ない方法で束縛状態の質量スペクトルを計測した.実験は2005年5月から6月まで行い、現在この新たに取得したデータの解析を行っている.データの量は、3TBに及び現在解析を進めている.解析が終了すれば、これまでの結果より不定性の少ない結果を得られるものと期待される.同時に、本研究課題と密接な関係にあるK中間子原子束縛状態の精密分光実験を2005年10月から12月にかけて同施設で実施した.この実験では、新たに開発したSDD検出器を遷移X線測定装置として用い、K中間子の最終原子状態である2p状態のシフトと幅を精密に決定することを目指す.また、実験装置がほぼ同じであるため、4He(K-,n)反応によるK中間子深束縛核探索のための統計の積み増しも同時に行った.原子状態と原子核状態は、どちらも強い相互作用の支配下にあるので、原子状態を精密に決定することで、本研究の研究課題であるK中間子の深束縛核探査実験に対して傍証的な役割を果たすことが期待される.この実験のためにフラッシュADCモジュール、校正用X線フォイルなどを購入した.こちらも現在データを解析中である. また、現在建設中のJ-PARC陽子加速器施設での実験を目指して予備的調査を開始した.
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