研究課題/領域番号 |
17071002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福山 寛 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (00181298)
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研究分担者 |
小形 正男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (60185501)
森下 將史 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助手 (90251032)
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キーワード | 量子流体 / 強相関 / フラストレーション / スピン液体 / 超流動 / 多体交換相互作用 / フェルミ流体 / 低次元系 |
研究概要 |
グラファイト表面に吸着した単原子層ヘリウム3(^3He)は、2次元フェルミ粒子系の強相関効果を調べる上で理想的な実験系である。今年度は、^4Heを1層プレコートしたグラファイト表面上に吸着した単原子層^3Heの磁気的性質を、70μK【less than or equal】T【less than or equal】500mKの4桁にわたる広い温度範囲と4.9【less than or equal】ρ【less than or equal】9.4nm^<-2>の広い面密度(ρ)範囲で調べた。その結果、ρの増加とともに2次元^3Heの基底状態は、正常フェルミ流体相(領域I)、異常量子相(領域II)、モット局在相(4/7整合相)、過剰粒子相(領域IIIa、IIIb)、弱い強磁性相(領域IV)と多彩に変化することが分かった。それぞれの量子相は、共鳴磁場の異常シフト(領域I)、2流体モデルを示唆するような磁化の温度依存性(領域II)、多体交換相互作用の競合がもたらすギャップレススピン液体状態(4/7相)、0.3mK以下でのスピン1重項への転移を示唆する磁化異常(領域IIIa)、過剰粒子の性質が強磁性的なものへ変化(領域IIIb)、一様な弱い強磁性相への磁気的変化(領域IV)など、低温で非常に興味深い性質を示す。 また、領域IIIに対応する吸着1層目と2層目の密度域に対して行った磁場中熱容量測定では、ゼーマン項に比べて異常に大きな磁場変化と熱緩和時間の変化を観測した。これは多体交換相互作用の競合が変化して磁気的フラストレーションが変化した可能性と、グラファイト基板と^3He薄膜間に磁気的な熱伝導機構が存在することを示唆している。 一方、強く相互作用する2次元フェルミ粒子系の一般的性質を理論的に調べるために、これまで開発された高温展開の方法と厳密対角化などの数値計算手法を改良した。今年度は、3角格子上でハイゼンベルグ模型の拡張版やt-J模型を使ってモット絶縁体近傍での比熱、帯磁率などの物理量を計算し、新奇なスピン液体状態についても調べるための準備を行った。
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