研究課題/領域番号 |
17071003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今田 正俊 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70143542)
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研究分担者 |
求 幸年 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (40323274)
中辻 知 東京大学, 物性研究所, 准教授 (70362431)
宮川 和也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (90302760)
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キーワード | 量子臨界現象 / 量子スピン液体 / フラストレーション / 金属絶縁体転移 / モット絶縁体 / 強相関電子系 / 新奇量子現象 / 特異な超伝導 |
研究概要 |
電子系とヘリウム系の双方について、新奇量子臨界点と新しい量子相解明がともに進み、共通する特徴と相違点がはっきりしてきた。以下に成果を列挙する。 ドープされた2次元モット絶縁体が示す電子構造の大規模な再構成をクラスター動的平均場近似で解明し、ホールポケット、フェルミアーク、リフシッツ転移転移、擬ギャップ等、謎となっていた現象の生成機構の包括的理解に達した。グラファイトに吸着されたヘリウム3の第2層固体相のヘリウム濃度を整合絶縁相から変化させたときに実験的に観測される比熱のピーク構造の変化などの謎を、第3層への強い密度ゆらぎと、液相がもつ密度秩序へのゆらぎによって説明できることを突き止めた。これは電子系の模型で見出されるホールポケットとの強いつながりと共通概念の存在を示す結果である。 Na_4Ir_3O_8が示す比熱とスピン緩和率の奇妙な振る舞いを理解する目的で、ハイパーカゴメ格子上のハバードモデルをクラスタ動的平均場法を用いて調べ、電子相関による状態密度の変化から実験結果を解釈出来る可能性を指摘した。ドープされた三角格子モット絶縁体κ-(ET)_4Hg_<2.78>Cl_8に関して^<13>C NMR測定を常圧から3.6GPaまで行った。その結果、常圧において観測された低温域でのスピン-格子緩和率の異常な増大はわずかな圧力で抑制されること、三角格子モット絶縁体K-(ET)_2Cu_2(CN)_3で観測された線幅の異常がこの物質でも観測され、共通の物理が支配していると考えられることから、量子スピン液体の機構についても示唆が得られた。 新しい重い電子系量子臨界物質としてbeta-YbAIB_4を開発した。この系はYb系で初の重い電子系超伝導体である。極低温測定から常圧、ゼロ磁場で量子臨界性を示すことと、超伝導性とを明らかにした。昨年理論的に解明した量子三重臨界による物理がこの物質の物性を支配している可能性を指摘した。
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