研究概要 |
ボースおよびフェルミ量子流体の理想的な研究対象である^4Heおよび^3He流体について,1次元のヘリウム量子流体の新規実現とその研究を行ってきた。 直径が18から28ÅのFSM-16の1次元ナノ細孔中に吸着した^4Heについて,比熱測定から相図をきめ,ボース流体のナノチューブが実現する吸着量-温度領域を決定した。更に,このボース流体が,フォノン励起について完全に1次元条件を満たす領域を決定した。 ^4He薄膜の超流動転移について,2次元のKosterlitz-Thouless転移との比較を行う上で,測定周波数依存を調べるのが重要であるが,水晶振動子上の超流動転移について10-180MHzの広い周波数領域での測定に成功した。今後はナノ多孔体についても周波数依存を測定する予定である。 1次元^3He流体については,直径28Åの1次元ナノ細孔で,1層程度の^4Heで壁面を覆ったあとに吸着した^3Heにおいて,高温の2次元ボルツマンガスから低温で1次元ガスに次元性のクロスオーバーを報告した。我々は更に直径が22および18Åの1次元ナノ多孔体についても実験を行い,次元性のクロスオーバーを確認した。この1次元ガスのフェルミ縮退状態を研究するために,超低温での比熱測定やNMRの実験を行うシステムを準備中で,CMN温度計や高周波SQUID磁化率計などの装置の調整をおこなった。また核断熱消磁冷凍装置を長期間連続運転できるように,ヘリウム再凝縮装置を取り付けた。 新たに実現した1次元^3He量子流体の相関状態を変分モンテカルロ計算等で理論解析した。その結果,^3He原子間の結合エネルギーが細孔直径に依存することと,その大きさの見積もりを行って,実験結果との比較等を行った。
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