研究課題/領域番号 |
17071007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前野 悦輝 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (80181600)
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研究分担者 |
三宅 和正 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (90109265)
石田 憲二 京都大学, 国際融合創造センター, 教授 (90243196)
田中 由喜夫 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助教授 (40212039)
神原 浩 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (00313198)
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キーワード | 異方的超伝導 / ルテニウム酸化物 / スピン三重項超伝導 / スーパークリーン / トンネル効果 |
研究概要 |
スピン三重項超伝導状態を制御することで現れる、内部自由度の存在に特有の新量子現象を多角的・集中的に研究する目的に沿って研究を進めた。本研究の第一のアプローチ「超伝導秩序パラメターの制御による新量子現象の研究」に関しては、スーパークリーン物質Sr_2RuO_4のRuO_2面に垂直に弱い磁場をかけて、超伝導状態でのスピン磁化率の測定に始めて成功した。その結果、三重項クーパー対のスピンの方向が比較的低磁場で磁場方向に回転することを示唆する知見を得た。理論的にはRuサイトでの原子内スピン軌道相互作用の効果を摂動論的に評価し、この実験結果を説明できる結果を得た。またスタンフォード大学との共同研究によってSr_2RuO_4の超伝導状態で光学カー回転の観測に成功した。クーパー対の軌道モーメントによる時間反転対称性の破れたいわゆるカイラル状態の新たな観測手段となることを示した。 第二のアプローチ「共晶接合系などでの新量子現象の研究」に関しては、Sr_2RuO_4と単一Ru金属片との界面に誘起される超伝導について、ゼロエネルギー束縛状態の観測に成功し、界面超伝導の出現とカイラル状態の出現が異なる温度磁場で起こることを見出した。さらに接合系に関しては、拡散伝導領域にある金属と超伝導体接合の超伝導近接効果に関する一般論を提案した。そして、Sr_2RuO_4のようなスピン三重項p波接合は奇周波数のペアとなって常伝導領域に侵入するという劇的な性質があることを予言した。一方、超低温走査トンネル顕微/分光装置を用いて、Sr_2RuO_4の局所電子状態密度観測を進めた結果、この物質の壁開表面特有の効果を詳しく把握できた。理論的に予言されているp波超伝導特有の近接効果を観測するために、面内方向でトンネル電流を検出する新たな試みに着手した。 また本特定領域内の他の研究グループとの連携、特に「内部自由度を持つ原子気体の超流動性」および「超流動ヘリウム3の異方的秩序変数とその制御」の研究グループとの研究会を企画した。
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