研究概要 |
量子渦はボース凝縮系に特有な位相欠陥であり,低温物理学における重要な研究対象として,主に超流動ヘリウムを舞台に,膨大な研究が行われて来た.一方,原子気体ボース凝縮系でも量子渦が観測され,膨大な研究が行われている.本研究は,超流動ヘリウムおよび原子気体ボース凝縮系というスーパークリーンな系での,量子渦とそれが引き起こす超流動乱流の新しい物理を研究し,量子流体力学の構築を目指すものである.本年度の主な研究実績は以下の通りである. (1)巨視的波動関数が従うグロス・ピタエフスキー方程式と熱的励起を記述するボゴリューボフ・ド・ジェンヌ方程式の連立数値解析を行うことにより,量子乱流における散逸機構を明らかにした。 (2)回転する超流動ヘリウム3において,種となる量子渦が系全体に発展する時に示す,ねじれた渦状態を,数値解析およびNMR実験により発見した。 (3)回転する光周期ポテンシャル上の原子気体ボース凝縮体において,動的渦格子状態を明らかにした。 (4)回転する2成分ボース凝縮体において,ブージャムと呼ばれる特異な位相欠陥が境界面に現れることを見いだした。 (5)交流超流動流中の量子渦のダイナミクスを数値的に調べ,十分流れ場の振幅が大きいとき,ケルビン波の非線形励起を経て量子乱流へ遷移することを示した。 (6)超流動相転移によって量子渦が生成され、振動子とまわりの壁との間に付着することを明らかにした。 (7)振動子で付着量子渦に振動を与えると、ある速度で乱流遷移することを明らかにした。これは(5)のケルビン波の非線形励起を経て量子乱流へ遷移することを示す実験的な証拠である。
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