本研究は、ナノ多孔体構造に閉じこめたヘリウム(^4He)が示す特異な量子多体現象を多様な実験により明らかにし、「スーパークリーン強相関ボース粒子系」の新しい物理を開拓・追求するものである。最終年度は以下の成果を得た。(1)周期的ナノ多孔体に圧入した^4Heの超音波測定を行い、2.5MPa以上の圧力域で超流動の観測に成功し、さらに超流動転移が3.4MPa近くでOKに近づく量子相転移的な挙動を観測した。従って量子相転移の発現には細孔による閉じこめ効果が重要で、細孔の乱れは本質的でないことが判明した。(2)ナノ多孔体中^4Heの固体超流動現象を調べ、その諸性質がバルク固体とほとんど同じであること、また液体超流動と共存しうることを発見した。後者より、固体超流動挙動は液体を取り囲む1-2原子層の薄膜でも存在することが示された。(3)(2)の研究の過程で、ナノ多孔質ガラスに吸着した固体4He薄膜においても、固体超流動と酷似した現象が一種の量子臨界現象として起こることを見出した。(4)1次元ナノ空間(FSM多孔体)に閉じこめた^4Heの熱容量・超音波測定から相図の全貌を明らかにし、熱容量ピークが超流動転移より高温側で存在すること、超流動の抑圧(量子相転移)とHeの弾性的性質に相関があることを明らかにした。(5)グラファイト表面に吸着した単原子層固体^4He超流動的挙動を詳細に調べ、超流動成分に振動速度依存性が存在することを初めて明確に示した。(6)直径50nmの1次元細孔が規則正しく配列した、ポーラスアルミナに圧入した^4Heの超流動をねじれ振り子により観測した。以上(1)-(6)の成果はいずれも初めて見出された現象であり、ヘリウムナノ構造が「スーパークリーン・ボース系」としての普遍性・創発性を持つことが、本研究により示された。
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