研究課題
X線や中性子などの量子ビームと強磁場の組み合わせは様々な磁場誘起相転移研究の強力な道具となる事が期待される。本研究では、放射光を用いたX線回折とX線分光の両者において世界最高磁場記録を更新するとともに、定常炉を用いたパルス磁場下中性子回折のための技術開発を行った。X線回折に関しては、従来から行ってきたミニコイルを用いた方式に加えて、汎用性の高い通常型のパルス磁場装置を用いて38テスラに至る高磁場においてCoOの粉末X線回折実験に成功し、巨大な磁気体積効果による格子定数の変化をX線によって直接的に明らかにすることに成功した。一方、ミニコイルを用いたX線分光実験もすすめ、硬X線領域におけるX線吸収スペクトルの装置開発を行い、51テスラまでの測定を可能にした。この装置を用いて、YbやEuを含む金属間化合物における磁場誘起価数転移に伴う価数変化を直接的に測定する事に成功した。またYbを含む近藤半導体において、転移における価数変化の有無を調べ、ギャップの消失が価数の変化を伴わないことを明らかにした。中性子回折に関しては、定常炉においてビーム強度を高めるためにコリメータの改良と集光光学系の試験を行うとともに、検出効率の向上のためにPSDを導入しその調整試験を行った。さらに35テスラの磁場が発生できるパルス磁場コイルを設計制作し、3号炉において試験測定を行った。その結果を踏まえて、十分なデータ精度を得るために20ミリ秒程度のパルス幅をもった実用コイルの設計と試作を行い平成18年度予定の本実験に向けた準備を整えた。
すべて 2006
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J. Phys. Soc. Jpn 75・2(発表予定)
PHYSICAL REVIEW B 73・1
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