研究課題
X線や中性子などの量子ビームと強磁場の組み合わせは、様々な磁場誘起相転移研究の強力な道具である。本研究では、既に達成したX線回折とX線分光に加えて、より難易度の高いX線MCDの実験に成功した。定常炉を用いたパルス磁場下中性子回折においては、世界最高記録の31.5Tまでの測定を行い、測定技術を確立するとともに、J-PARCにおける実験のための電源の更新改良とコイルやクライオスタットの設計と製作を進めた。X線MCDに関しては、EuおよびCeの反強磁性化合物において、強磁場を加えることで誘導されるMCD信号を硬X線領域で観測することに初めて成功した。この事により、従来は強磁性体に限られていたMCD測定を、磁性体一般に応用する事が可能になった点は画期的である。価数転移を示すEuNi_2(Si_<0.15>Ge_<0.85>)_2のEuサイトのMCD信号は、L_2およびL_3の両エッジで明確に観測され、理論班との協力によりサイト間の混成パラメータなどが定量的に決定できる事が明らかになった。中性子回折においては、フラストレーションの強い希土類磁石TbB_4の磁化ステップに対応した反射強度の磁場依存性を明らかにし、磁化がサイト毎に不均一になっている模型を支持する結果を得た。また、マルチフェロイック物質CuFeO_2における磁化プラトーの波数ベクトルを1/3プラトー相まで全て決定した。回折実験においては、スピネル化合物を始めとした磁場誘起相転移の磁気状態と磁気-格子結合を明らかにした。
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