研究概要 |
21年度に得られた主な成果を以下に列挙する: (1) 48Tのパルス磁場下で59Co-NMRのスペクトル計測に成功し、コバルト酸化物の研究に応用した。 (2) 44Tまでの定常磁場下で63Cu/65Cu-NMR測定を行い、銅酸化物高温超伝導体の基底状態がキャリアドーピンピング量とともにどのように変遷するかを明らかにした。 (3) 二段階磁化プラトーを示す量子スピン磁性体NH4CuCl3において、強磁場NMR測定を行い、低温で磁場誘起マグノンが局在化することを明らかにした。また、その空間的配置について、理論モデルに強い制限を与える結果を得た。 (4) 55T強磁場ESRを用いてボンド交替鎖系Pb2V3O9の磁場誘起磁気秩序相のESRを広い周波数-磁場領域で観測し,低温におけるg値の分布が,マグノンのBose Einstein凝縮相(BEC)と合致することを明らかにするとともに強磁場領域のスピンダイナミクスを明らかにした。飽和磁場(30T)までの微視的な測定は,BEC系で初めてである。 (5) 二次元三角格子反強磁性体CuCrO2とスピネル酸化物HgCr2O4の強磁場多周波ESR測定を行い、前者では強誘電分極の磁場変化をESRの実験及び解析により示し、後者では磁場印加と共に歪みが解消されることを示した。 (6) 重い電子系物質CeCoIn5の低温強磁場領域での新たな超伝導相においてNMR測定を行った。H//a-軸ではFFLO超伝導相のみで変調構造を伴う磁気秩序(IC-SDW)が出現し、内部磁場は引加した外部磁場に大きく依存することを明らかにした。またH//c-軸の場合でもFFLO相の出現が示唆する結果を得た。 しかしながら、H//a-軸の場合と異なり、H//c-軸では最低温度(約0.04K)まで明確な磁気秩序を確認することは出来なかった。
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