研究概要 |
平成19年度は、これまでに行った1-butyl-3-methylimidazolium(bmim)陽イオン系に対する陰イオン変化の実験の発展として、陽イオンのアルキル基の長さを系統的に変化させた系の熱容量と中性子散乱を行った。具体的に測定したのは、アルキル炭素数を1,2,3,6である(陰イオンをヨウ素に固定)dmimI,emimI,pmimI,hmimIである。ガラス転移温度と融解温度を詳細に調べた結果、emimIとpmimIの間にギャップがあり、アルキル炭素数が2以下ではイオン液体的性質、3以上では分子液体的性質があると結論できた。中性子散乱によるボゾンピークの研究では、上記のイオン液体に加え、bmimBr,bmimBF_4,bmimPF_6についても測定した。その結果、ボゾンピークエネルギーと強度は、陽イオンにはほとんど依らず、陰イオンによってのみ変化するという予想外の結果が得られた。 平成18年度から始めたイオンゲルPMMA/emimTFSIの研究に対しては、平成19年度は主に熱容量の組成変化を研究した。実際に測定したのは、イオン液体モル分率x(IL)が1.0、0.5、0.3、0.1、0の試料である。x(IL)により大きく変化するガラス転移が観測された。x(IL)=0.3と0.1の試料では、ガラス転移が2段階で起こり、低温側のガラス転移はゲル中のイオン液体の運動の凍結、高温側のガラス転移は主にPMMAの運動の凍結によることが分かった。PMMAのガラス転移温度はx(IL)の増加に伴い急激に低下しており、イオン液体によるゲルの可塑効果もはっきりと観測された。ガラス転移で起こる熱容量ジャンプの大きさのx(IL)依存性を検討したところ、x(IL)=0.2〜0.3付近でイオン液体とPMMAの熱容量加成性が成り立たないという興味深い結果を得た。
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