研究課題
イオン液体の気化と気相での構造に関する分光学的な知見を得るためレーザー脱離気化法を利用して気相イオン液体の質量分析を行った。TFSI塩などではクラスターがほとんど観測されず、TFSI塩などは例外的に蒸気圧を持つ事が示された。この研究を受けイオン液体を加熱して気化する装置の開発と気相イオン液体の分光計測を計画し基礎的な分光のデータを得た。極低温赤外分光TFSI塩などを蒸発させて生成した気体状態分子がいかなる構造をしているか調べるため、加熱によって気化したイオン液体を極低温下でNeマトリックス中に閉じ込め、気相イオン液体成分と同じ分子種と考えられるイオン対の赤外スペクトル測定を行った。気化する温度が高いと液体の赤外スペクトルに近いバンドが現われる。気化するイオン対の構造が気化温度で異なることを示唆し、イオン対の構造を決定するため、赤外スペクトルの解析・構造に関する量子化学計算も併せて行った。可視紫外分光 O_2の三重項消光反応モデル系としてmethylene blue (MB)三重項のO_2による消光過程を取り上げ、ナノ秒過渡吸収測定法により決定した速度定数をもとにRTIL中の三重項励起状態緩和ダイナミクスについての知見を得た。TFSI塩が蒸気圧を持つので、300℃程度まで可能な石英製ガスセルを製作し、気化したTFSI塩の可視紫外吸収分光を行い、BmimTFSIのスペクトルで紫外域にイミダゾリウム環のππ*吸収と同定されるブロードな吸収帯が観測された。分子吸光係数・気体の状態方程式を仮定し、蒸気圧曲線を作成、得られた曲線は理論式に従い、蒸発熱135KJ/molを得た。この値は通常の有機分子より大きく、分子間のクーロン引力の影響が大きい。スペクトルや蒸気圧曲線はTFSI塩でも得られ、今後はより正確な蒸気圧の見積もりに基づいた蒸発熱の議論を行い、気化の過程についての理解を深めたい。レーザーによる超高感度吸収分光法と超音速ジェットを組みあわせた装置で現在測定中である。
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