本年度はポリフッ化水素塩イオン液体中での電解フツ素化やプツ素化環状エーテル、環状チアエーテル、さらには環状アシア簡単合成に成功し、ほぼ所期の目的を達成した。 1)ポリツッ化水素塩イオン液体中での超音波照射による電解フッ素化 イオン液体中では粘性が高いために電極への物質移動が反応律速となるが、超音波照射により物質移動が著しく促進されることを超音波照射下でのCV測定により確認するとともに、電解フッ素化の効率が飛躍的に向上することを見出した。興味深いことにこれまで酸化されやすいイオン液体であるET_3N-3HF中では電解フッ素化が困難とされてきたジフッ素化が超音波照射下で容易に達成できることを見出した。さらに、ポリフッ化水素塩イオン液体中での2-アリールー4-チアソリジノンの電解フッ素化に成功するとともに超音波照射がフッ素化体の収率を向上させるだけでなく立体化学を大きく変化ざせ、トランス異性体が増えることも見出した。 2)ポリフッ化水素塩イオン液体を用いるフッ素化複素環化合物の合成 ポリフッ化水素塩イオン液体が強酸性であることに着目し、これをプロトン酸触媒兼フッ素源とする無溶媒系でのPrince環化反応による含フッ素複素環化合物の合成を行った。すなわち、溶媒を用いずにイオン液体Et4NF-5HF中で種々のアルデヒドとホモアリルアルコールとを室温で混合攬絆するだけで短時間でPrince環化とフッ素化が起こり、相応する4-フルオロテラヒドロピラン誘導体が高収率で得られことが分かった。本反応ではシメ体のみが得られ高い立体選択性を示した。本反応はホモアリルチオールや窒素上を電子吸引基で保護したホモアリルアミンとのPrince環化にも拡張でき、4位がフッ素化されたチアシクzヘキサンやピペリジン類の合成にも成功した。本方法は従来法に比べ簡便かつ収率も良好であり、しかも溶媒を必要としないことからイオン液体の特徴を示す環境調和型合成プロセスになりうるものと思われる。
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