本年度は下記の研究を行い、ほぼ所期の目的を達成した。 1. 疎水性イオン液体修飾電極の開発と応用 : 疎水性の1-ブチルー3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホニウム塩イオン液体による修飾電極を作製し、これを用いることにより、疎水性相互作用による疎水性基質の電極表面への濃縮効果や親水性基質のブロッキング効果が発現することをサイクリックボルタンメトリーにより明らかにした。 2. HF塩イオン液体中での含硫黄化合物の電解フッ素化および電解脱硫フッ素化 無溶媒系ではHF塩イオン液体のフッ化物イオンの求核性が低くなりフッ素化の効率が低下する。これに対し、エーテル系溶媒がフッ化物イオンの求核性を向上させることに着目し、ジメトキシエタンやポリエチレングリコールなどのエーテル構造を持つ化合物を僅か数パーセント、HF塩イオン液体中に添加したところ2-ピリミジルスルフィド類の電解フッ素化の収率が著しく向上することを見出した。さらに、この添加効果を利用し、チオエステル類の電解脱硫フッ素化にも成功した。 3. イオン液体固定型メディエーターの合成と電極触媒的脱硫フッ素化への応用 : 4級アンモニウム塩部位を分子内に持つヨードベンゼン誘導体をメデイエーターとするHF塩イオン液体中での電極触媒的電解脱硫フッ素化に成功した。さらに、イオン液体と両者が繰り返し再利用可能なことを例示した。 4. 電位窓の広いイオン液体の創製 : 分子内にプロピレンカーボナート部位を持つイミダゾリウム塩やピペリジニウム塩などのイオン液体を新たに合成し、CV測定を行ったところ電位窓が6Vと広くなったものの粘性が上昇するという新たな問題が生じた。現在この問題解決に向けて努力中である。 5. イオン液体中でのPrins環化反応を利用したポリマー合成 : ポリHF塩イオン液体中でのPrins環化をキーステップとする含フッ素ポリマー合成の最初の成功例を示した。 6. 超音波照射下、イオン液体中での複素環化合物の電解フッ素化 : イオン液体中では粘性が高いため電極への物質移動が反応律速となるが、超音波照射により物質移動が著しく促進され、電解フッ素の効率が飛躍酌に向上ずることを見出した。
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