研究概要 |
これまでにイオン導電率測定と磁場勾配NMR測定から得られるモル導電率比が「イオン液体の自己解離性を表すパラメータ」になり得るという観点で研究を進めてきた。イオン液体の性質はカチオンとアニオンとの組み合わせによって決まるため、無限といえるほどの多様性がある。しかし欲しい性質の溶媒を使用者がデザインして設計するDesigner Solventや、欲しい機能を設計して持たせたTask-Specific Ionic Liquidの考え方を推し進めていくためにはイオン液体を特徴づける自己解離性を表すパラメータの提出は重要と考えるからである。この課題に関して本年度は特に汎用イオン液体の自己解離性を含む基礎物性のデータライブラリーの拡充を図った。さらにはプロトン性イオン液体の自己解離性を検討し、非プロトン性イオン液体の相違点を明らかにすることによってその特徴に迫った。 さらに本年度はシリカ微粒子をモデルとしたイオン液体中へのコロイド分散挙動を系統的に調査した。イオン液体はイオン強度が著しく高いため一般的には良好なコロイド分散媒ではない。しかしこれを逆に利用するとイオン液体中におけるコロイド微粒子のネットワーク構造が形成きれ、少量のシリカ添加でゲル化することを見出しだ。電解質膜としての電気化学的、力学的性質はこれまでに検討されてきた高分子ネットワークからなるイオンゲルと比較、議論された(J. Phys. Chem. B, 2008, 112, 9013)。またイオン液体を相溶する高分子をグラフト化したシリカナノ微粒子は安定なコロイド分散系を形成し、その濃厚溶液はゲル状物質を与えることを見出した(Langmuir, 2009, 25, 825ほか)。さらにその溶液は特定の波長の光を選択反射するにも係わらず角度依存性を持たないまったく新しいタイプの構造色を呈することを見出した。
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