研究概要 |
負イオン同士の反応におよぼすイオン液体の影響について検討した。具体的にはI_2^-イオン同士の反応速度を過渡吸収分光法により調べた。I^-イオンを光励起・イオン化する事によりI_2^-イオンを生成した。イオン液体には、N,N-Diethyl-N-methyl-(2-methoxyethyl)ammonium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide(DEME・TFSI)およびN,N-Diethyl-N-methyl-(2-methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate(DEME・BF4)を用いた。I_2^-+I_2^-の反応は溶媒の誘電率に敏感であり、水中では大きな比誘電率を反映して比較的速く反応が進行するが、誘電率がさほど大きくないアルコール中ではI_2^-同士は互いに接近できず、水中に比較して反応は遅い。イオン液体DEME・TFSIとDEME・BF4中で決定した速度定数は、どちらのイオン液体中でも水中における反応速度とメタノール中でのそれとの中間の値であった。このことから、イオン液体中では、I_2^-イオンは、クーロン斥力が働くにもかかわらず比較的容易に接近できると考えられる。 I^-イオンを光イオン化することにより放出された電子は、既往の結果から判断すると、イオン液体中ではおそらく溶媒和された電子(e-)_sあるいはポーラロンとして存在すると考えられる。この溶媒和電子とBMImとの反応を測定した。2次反応速度定数として3.9x10^8m^<-1>s^<-1>(2.7x10^8M^<-1>s^<-1>)を得た。DEME・TFSIの粘度を考慮すると拡散律速反応速度定数は約5x10^7M^<-1>s^<-1>であるが、ここで求めた反応速度はイオン液体の粘度から予想される拡散律速反応よりも1桁速いことが明らかとなった。
|