研究概要 |
イオン液体中でヨウ素イオンを光イオン化することにより,水中あるいは有機溶媒中と比較して効率よく電子を生成できることが分かった。「イオン液体の海」に飛び出したドライ電子は周囲のイオン液体との静電的互作用などによりエネルギーを失い熱化して,最終的にはイオン液体が作るポテンシャルの井戸に補足されて溶媒和電子が形成されると考えられる。248nmエキシマーレーザーによる溶媒和電子生成の量子収率は,TMPA-TFSI中で0.34であり,水中での収率0.29よりも高いことが分かった。また,イオン液体中では溶媒和される前の電子つまり「ドライ電子」が,イミダゾリウムカチオンと非常に効率よく反応することを見いだした。イオン液体中で、イミダゾウリウムカチオンがドライ電子などと効率よく反応するという実験事実は、イオン液体の様々なセンサーやデバイスへの応用などで考慮しなければならない特徴と考えられる。 色素増感太陽電池ではヨウ素イオンがレドックスとして用いられている。3班の渡邊正義らが報告しているヨウ素イオン間のGrotthuss型交換反応の可能性をより明らかにするため、「負イオン同士」の反応であるヨウ素ダイマーアニオン間におよぼすイオン液体の影響について、前年度に引き続き検討した。種々のイオン液体中で測定したヨウ素ダイマーアニオン間の速度定数は,意外にも,イオン液体の粘度から計算した「中性分子」の拡散律速反応速度とよく一致することが分かった。この結果より,イオン液体中では,イオン反応体間の電荷は効率よく遮閉されており,クーロン斥力による反発を受けずに容易に接近できることが示唆された。
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